東京の「隠れ里」、浅草橋


町中に突然姿を現す「下町の丸ビル」。ベルトのバックルなどを扱う企業の社屋で、現在は美容院に建て替えられている。


 台東区浅草橋。JR総武線「浅草橋」駅周辺は、江戸通り沿いを中心に、包装用品と日本人形の問屋が集中する問屋街である。一大観光地の「浅草」に名前は似ているが、隣接している地域ではない。江戸通りを一歩裏に入り、しばらく住宅街を進むと、戦災を免れたことによって残った戦前からの民家や商店、ビルなどが街のあちこちに点在している地域がある。住所的には「鳥越」「台東」あたりが、道も細く古い建物が多く残っていた。大きな道路が多くないこと、駅が遠いことなどが幸いして、東京の中心地にも関わらず、奇跡的に戦前の雰囲気が残っている。まさに東京の「隠れ里」と呼ぶにふさわしい場所だ。先日久しぶりにこの辺りを通ってみたところ、昔撮影した時とほとんど変わらない場所も多かったが、約半分近くの建物が姿を消していたことに驚いた。名作と呼べる建物ほど現存していないのはとても残念でならない。


忍岡高校近くにあった和菓子工場。木製のケースが店頭に置かれている光景を何度か目撃したことがある。銅板貼りの木造にも関わらず3階建てはとても珍しい。ここも一般住宅に建て替えられてしまっていた。


味噌屋さんとカメラ屋さんの二軒長屋。モルタルと銅板が隣り合わせで建ち並ぶ珍しい風景だったが、ここもいつのまにかマンションに建て替わっていた。